罰則強化の「ながら運転」はどこまでが「ながら」? 食事や化粧は? - 価格.comマガジン
「ながらスマホ等の罰則強化」を含む改正道路交通法が、いよいよ2019年12月1日に施行されました。当記事では、改正された道路交通法の内容とともに、多くの方々が気になっているであろう、何をどこまですると「ながら運転」になるのかなどについて、解説いたします。
運転中の携帯電話使用に関する規制は、いつから始まった?
運転中の携帯電話の使用に関して、最初に規制が始まったのは1999年(平成11年)11月でした。このときは、
(1)携帯電話等を手に持って通話のために使用すること
(2)携帯電話等(カーナビ、携帯型ゲーム機など含む)の画面に表示された画像を注視すること
上記の2点について、交通の危険(交通事故など)を生じさせた場合の罰則規定が設けられましたが、ただ保持している(使用している)だけの罰則はありませんでした。(規定に違反したことが原因で交通の危険を生じさせた場合は、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金)。
初の規制ということもあって、施行直後は一定の効果がありましたが、間もなく運転中の携帯電話使用を原因とする事故が急増。そのため、5年後の2004年11月には罰則が強化され、保持しているだけで罰則が科せられるようになったのです。このときに、携帯電話を手に持たずに通話ができる「ハンズフリー通話」が一気に普及しました。
令和元年12月から厳罰化される理由は?
「携帯電話使用等に起因する交通事故件数」は、携帯電話などを通話目的、及び画像目的で使用したことや、カーナビなどの注視に起因して発生した交通事故件数のこと。また、携帯電話及びカーナビのどちらも使用していた事故については1件として計上。政府広報オンラインより。数値提供:警察庁
警察庁では、全国で年間約600万件の取り締りを行っていますが、その中で運転中の携帯電話使用等については、年間80万件以上の取り締りを実施しています(2018年(平成30年)中は全体の約14%)。しかし、2018年(平成30年)中にスマートフォンや携帯電話の操作(ゲーム含む)などが原因で発生した人身事故は2,790件あり、そのうち死亡事故が45件も発生しました。これは、携帯電話等使用なしの場合に比べて約2.1倍と高く、2019年12月1日から「厳罰化」となった理由もここにあります。
もし、「ながらスマホ」で違反や事故を起こしてしまうとどうなる?
厳罰化によって「ながらスマホ」で事故を起こした場合(交通の危険)には、違反点数が6点で即免停となり、最大1年の懲役に加えて30万円以下の罰金が科せられます。また、保持しているだけの場合であっても、改正前は「5万円以下の罰金」でしたが、改正後は「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑が新設されました。反則金などの支払いを拒む運転者には、実刑適用もあり得ます。さらに、酒気帯びの場合は携帯電話使用等(交通の危険)が16点、携帯電話使用等(保持)が15点となるので、酒気帯び+スマホ使用では即免許取消処分となります。
【2004年11月〜2019年11月末までの罰則、反則金、違反点数】
■携帯電話使用等(保持)
罰則:5万円以下の罰金
反則金:大型7千円、普通6千円、二輪6千円、原付5千円
違反点数:1点
■携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反則金:大型12千円、普通9千円、二輪7千円、原付6千円
違反点数:2点
【2019年12月からの罰則、反則金、違反点数】
■携帯電話使用等(保持)
罰則:6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金
反則金:大型25千円、普通18千円、二輪15千円、原付12千円
違反点数:3点
■携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:1年以下の懲役、または30万円以下の罰金
反則金:反則金の対象外
違反点数:6点
ところで、気になる「ながら」の定義は?
厳罰化される対象となる「ながら」の定義は、改正前と変わらず携帯電話等の使用に限られています。道路交通法 第七十一条 五の五には、以下のように書かれています。
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。)を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。
まず、ながら運転の対象となる行為については、「通話」または「画像の注視」の2つです。条文には、「当該自動車等が停止しているときを除き」とありますので、赤信号などでクルマが止まっているときには違反とならず、動いているときが対象となります。
「通話」について、対象となる機器は「携帯電話用装置」「自動車電話用装置」「その他の無線通話装置」になります。携帯電話用装置は、一般的なスマートフォンなどの携帯電話のことで、自動車電話用装置とは携帯電話が普及するまえに自動車の車内に備え付けられていた専用の無線電話機のことです。その他の無線通話装置は、トランシーバーなどの無線機のことを指します。条文では、これらについて「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」とあります。要は、手で機器を直接持たない、ハンズフリーのヘッドセットやイヤホンなどを用いた通話については対象外、ということになります。
ですが、ここで注意したいのは、ハンズフリーでの通話は「道路交通法」では対象外となりますが、都道府県の条例では違反になる可能性があるという点です。たとえば、東京都道路交通規則には、以下のように書かれています。
第8条(5)高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。
条例では、周囲の交通の音が聞こえなくなるようなイヤホンの使用に関して禁止しているのです。これは、イヤホンをつけているだけでただちに違反ということではないのですが、周囲の音が聞こえない状況で運転していると判断されれば違反の可能性があるということと、東京都に限らず日本全国、ほとんどの都道府県でこの条例が施行されていますので注意しましょう。
そして、もうひとつの「画像の注視」について、対象となる機器は「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置」とあります。「自動車に取り付けられている画像表示用装置」というのは、カーナビやディスプレイオーディオなどのことです。また、「持ち込まれた画像表示用装置」とありますから、スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などについても対象となります。さらに「画像の注視」については、手で保持していなくとも取り締まりの対象となります。ですので、たとえばスマートフォンホルダーを使って、スマートフォンを手に持たずに使っていたとしても、注視していれば取り締まりの対象となってしまうのです。
「注視」について、どのくらい見ていることを指すのか、道路交通法の条文では明確に定義されていません。メディアなどでは、「2秒以上画面を見ると、取り締まりの対象となる可能性が高い」などと報道されることが多いようですが、それなら1秒なら安全なのか、取り締まられないのかというとそうではありません。注視しているかどうかの判断は、現場の警察官によります。大事なことは、運転中にわずかでもよそ見をしたり注意をそらしたりすれば、大きな危険が生じてしまうことを改めてドライバーが認識すること、そしてスマホなどに注意をそらさずに運転に集中するという意識を常に持つことでしょう。
なお、食べながらの運転や化粧しながらの運転は「ながら運転」の対象にはなりませんが、運転をするすべての人には守らなくてはいけない大事な決まりがあります。それは、「車を安全に運転する義務を負っている」ということです。
道路交通法では、
第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
と定義されています。「安全運転なんて、当然でしょ?」と思う方も多いかもしれませんが、道交法における「安全運転」とは、たんに法定速度以下で信号や標識を守って走ればいいというだけではありません。運転中はつねにハンドル、ブレーキなどを確実に操作し、周囲の交通状況がどうなっているのかを的確に判断し、事故を起こさないように運転しなければいけないということなのです。
たとえば、飲食したり化粧したりといった運転によって、ハンドルやブレーキが正しく操作されず事故を起こした場合には、「安全運転義務違反」として処分されることになります。
12月より厳罰化された「ながら運転」の定義に当てはまらない「ながら行為」であっても、それが原因で安全に車を操作することができず、事故が起きれば安全運転義務違反となることは覚えて置いておくべきでしょう。
日刊自動車新聞社に入社し、自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。認定チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
「ながらスマホ等の罰則強化」を含む改正道路交通法が、いよいよ2019年12月1日に施行されました。当記事では、改正された道路交通法の内容とともに、多くの方々が気になっているであろう、何をどこまですると「ながら運転」になるのかなどについて、解説いたします。
運転中の携帯電話使用に関する規制は、いつから始まった?
運転中の携帯電話の使用に関して、最初に規制が始まったのは1999年(平成11年)11月でした。このときは、
(1)携帯電話等を手に持って通話のために使用すること
(2)携帯電話等(カーナビ、携帯型ゲーム機など含む)の画面に表示された画像を注視すること
上記の2点について、交通の危険(交通事故など)を生じさせた場合の罰則規定が設けられましたが、ただ保持している(使用している)だけの罰則はありませんでした。(規定に違反したことが原因で交通の危険を生じさせた場合は、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金)。
初の規制ということもあって、施行直後は一定の効果がありましたが、間もなく運転中の携帯電話使用を原因とする事故が急増。そのため、5年後の2004年11月には罰則が強化され、保持しているだけで罰則が科せられるようになったのです。このときに、携帯電話を手に持たずに通話ができる「ハンズフリー通話」が一気に普及しました。
令和元年12月から厳罰化される理由は?
「携帯電話使用等に起因する交通事故件数」は、携帯電話などを通話目的、及び画像目的で使用したことや、カーナビなどの注視に起因して発生した交通事故件数のこと。また、携帯電話及びカーナビのどちらも使用していた事故については1件として計上。政府広報オンラインより。数値提供:警察庁
警察庁では、全国で年間約600万件の取り締りを行っていますが、その中で運転中の携帯電話使用等については、年間80万件以上の取り締りを実施しています(2018年(平成30年)中は全体の約14%)。しかし、2018年(平成30年)中にスマートフォンや携帯電話の操作(ゲーム含む)などが原因で発生した人身事故は2,790件あり、そのうち死亡事故が45件も発生しました。これは、携帯電話等使用なしの場合に比べて約2.1倍と高く、2019年12月1日から「厳罰化」となった理由もここにあります。
もし、「ながらスマホ」で違反や事故を起こしてしまうとどうなる?
厳罰化によって「ながらスマホ」で事故を起こした場合(交通の危険)には、違反点数が6点で即免停となり、最大1年の懲役に加えて30万円以下の罰金が科せられます。また、保持しているだけの場合であっても、改正前は「5万円以下の罰金」でしたが、改正後は「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑が新設されました。反則金などの支払いを拒む運転者には、実刑適用もあり得ます。さらに、酒気帯びの場合は携帯電話使用等(交通の危険)が16点、携帯電話使用等(保持)が15点となるので、酒気帯び+スマホ使用では即免許取消処分となります。
【2004年11月〜2019年11月末までの罰則、反則金、違反点数】
■携帯電話使用等(保持)
罰則:5万円以下の罰金
反則金:大型7千円、普通6千円、二輪6千円、原付5千円
違反点数:1点
■携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反則金:大型12千円、普通9千円、二輪7千円、原付6千円
違反点数:2点
【2019年12月からの罰則、反則金、違反点数】
■携帯電話使用等(保持)
罰則:6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金
反則金:大型25千円、普通18千円、二輪15千円、原付12千円
違反点数:3点
■携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:1年以下の懲役、または30万円以下の罰金
反則金:反則金の対象外
違反点数:6点
ところで、気になる「ながら」の定義は?
厳罰化される対象となる「ながら」の定義は、改正前と変わらず携帯電話等の使用に限られています。道路交通法 第七十一条 五の五には、以下のように書かれています。
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。)を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。
まず、ながら運転の対象となる行為については、「通話」または「画像の注視」の2つです。条文には、「当該自動車等が停止しているときを除き」とありますので、赤信号などでクルマが止まっているときには違反とならず、動いているときが対象となります。
「通話」について、対象となる機器は「携帯電話用装置」「自動車電話用装置」「その他の無線通話装置」になります。携帯電話用装置は、一般的なスマートフォンなどの携帯電話のことで、自動車電話用装置とは携帯電話が普及するまえに自動車の車内に備え付けられていた専用の無線電話機のことです。その他の無線通話装置は、トランシーバーなどの無線機のことを指します。条文では、これらについて「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」とあります。要は、手で機器を直接持たない、ハンズフリーのヘッドセットやイヤホンなどを用いた通話については対象外、ということになります。
ですが、ここで注意したいのは、ハンズフリーでの通話は「道路交通法」では対象外となりますが、都道府県の条例では違反になる可能性があるという点です。たとえば、東京都道路交通規則には、以下のように書かれています。
第8条(5)高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。
条例では、周囲の交通の音が聞こえなくなるようなイヤホンの使用に関して禁止しているのです。これは、イヤホンをつけているだけでただちに違反ということではないのですが、周囲の音が聞こえない状況で運転していると判断されれば違反の可能性があるということと、東京都に限らず日本全国、ほとんどの都道府県でこの条例が施行されていますので注意しましょう。
そして、もうひとつの「画像の注視」について、対象となる機器は「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置」とあります。「自動車に取り付けられている画像表示用装置」というのは、カーナビやディスプレイオーディオなどのことです。また、「持ち込まれた画像表示用装置」とありますから、スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などについても対象となります。さらに「画像の注視」については、手で保持していなくとも取り締まりの対象となります。ですので、たとえばスマートフォンホルダーを使って、スマートフォンを手に持たずに使っていたとしても、注視していれば取り締まりの対象となってしまうのです。
「注視」について、どのくらい見ていることを指すのか、道路交通法の条文では明確に定義されていません。メディアなどでは、「2秒以上画面を見ると、取り締まりの対象となる可能性が高い」などと報道されることが多いようですが、それなら1秒なら安全なのか、取り締まられないのかというとそうではありません。注視しているかどうかの判断は、現場の警察官によります。大事なことは、運転中にわずかでもよそ見をしたり注意をそらしたりすれば、大きな危険が生じてしまうことを改めてドライバーが認識すること、そしてスマホなどに注意をそらさずに運転に集中するという意識を常に持つことでしょう。
なお、食べながらの運転や化粧しながらの運転は「ながら運転」の対象にはなりませんが、運転をするすべての人には守らなくてはいけない大事な決まりがあります。それは、「車を安全に運転する義務を負っている」ということです。
道路交通法では、
第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
と定義されています。「安全運転なんて、当然でしょ?」と思う方も多いかもしれませんが、道交法における「安全運転」とは、たんに法定速度以下で信号や標識を守って走ればいいというだけではありません。運転中はつねにハンドル、ブレーキなどを確実に操作し、周囲の交通状況がどうなっているのかを的確に判断し、事故を起こさないように運転しなければいけないということなのです。
たとえば、飲食したり化粧したりといった運転によって、ハンドルやブレーキが正しく操作されず事故を起こした場合には、「安全運転義務違反」として処分されることになります。
12月より厳罰化された「ながら運転」の定義に当てはまらない「ながら行為」であっても、それが原因で安全に車を操作することができず、事故が起きれば安全運転義務違反となることは覚えて置いておくべきでしょう。
日刊自動車新聞社に入社し、自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。認定チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。
2019-12-06 08:01:08Z
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