福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫などの皮膚治療薬(経口薬)に睡眠導入剤の成分が混入していた問題で、同社は11日深夜、この薬を服用した70代の女性(首都圏の病院に入院中)が死亡したと発表した。また県の調査で、同社が厚生労働省から承認された手順に反し、製造過程で原料をつぎ足していたことも判明。つぎ足す工程で誤って睡眠導入剤の成分を補充したという。同社の小林広幸社長ら幹部は12日、この薬の製造・管理が手作業で行われ、2人1組でチェックしながら行うという内規が守られていなかったことを明らかにした。
女性は経口抗真菌剤のイトラコナゾール錠50「MEEK」を服用し、10日に死亡した。同社は服用と死亡との因果関係などを詳しく調べる。小林社長は「重大な過失を犯し、おわび申し上げる。責任の重さを痛感している」と謝罪した。
小林化工(1961年設立、従業員は約800人)はジェネリック医薬品(後発薬)など約290品目を販売。本社があるあわら市には複数の工場や研究所があり、問題の薬は市内の「矢地第1・第2工場」で製造された。この工場では、別の工場で導入されている成分のバーコード管理はされず、すべて人の手によって管理されていた。第1・第2工場では今回の薬のように生産量が少ない薬を製造していたという。
県や同社によると、製造過程で担当者が薬の成分を別の容器に移し替えたり、自然に機械に付着したりして目減りする場合がある。混入は、減った成分を補うために成分をつぎ足す際、保管場所から誤って睡眠導入剤「リルマザホン塩酸塩水和物」を取り出し、混ぜたとみられる。イトラコナゾールの製造過程でつぎ足しすることは厚労省が承認した製造手順では認められていないという。
また、同社の規定では、成分の取り出しや計量は2人1組で指をさしながら間違いがないかを確認することになっているが、今回は担当者が1人で作業をしていた。この担当者は同社の内部調査に対し「7月ごろの作業で、はっきりと覚えていない」と答えているという。小林社長は「現場での指導のあり方やチェック体制に問題があった」と話した。
健康被害が報告されているのは6、7月に製造されたロット番号T0EG08の製品(100錠入り929箱)。同社は出荷前の7月に厚労省の認めるサンプル調査をしたが混入を見抜けず、9~12月に出荷した。県は、混入した工程などが医薬品医療機器法違反に当たるとみて、9日の立ち入り調査に続く追加調査を検討している。
リルマザホンは、緊張を和らげ睡眠を促進する作用があり、通常は不眠症治療のため就寝前に服用するという。今回の混入は1錠当たり5ミリグラムで、これは1回の最大投与量の2・5倍。イトラコナゾールは1日8錠服用する人もおり、その場合、通常の20倍に相当する。大量に服用すると、ろれつが回らなくなったり意識がもうろうとしたりし、服用した患者の中には服用直後に意識がなくなり救急搬送されたり、運転中に意識消失して中央分離帯に接触したりしたケースが判明している。退院後に服薬を再開し、症状を繰り返した例もあったという。
県によると、処方された患者は全国31都道府県の364人。意識消失や記憶喪失などの健康被害の報告は12日午前0時現在で134人に上り、うち救急搬送や入院が確認されたのは33件。服用による意識障害などが原因とみられる交通事故は15件起きているという。
【岩間理紀、横見知佳、菅沼舞】
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